寂寥郊野/吉目木晴彦(1993年上半期受賞)


ルイジアナ州でアメリカ人と国際結婚した日本人妻が、結婚30年を迎えて、アルツハイマー症になってしまう物語。芥川賞受賞作で外国を舞台にした作品はあまりないので、ちょっと新鮮な感じがしました。

しかし、なぜにルイジアナ州なんだと思いWikipediaを見てみたところ、どうやら著者の吉目木さんはルイジアナ州に住んでいたことがあるようです。

なので、現地の描写はとてもリアルで、日本人の人間関係などもなんだか臨場感がありました。

ストーリーとしては、日本人妻がアルツハイマーで物忘れや奇行が目立ち始めて、アメリカ人社会で浮いてしまったり、家族がギクシャクするなかで、夫婦の絆を見つめ直す、というような展開です。

アメリカ人の夫の方も失業に苦しんでいて、そんな中で妻の病気の原因を推察して解決に努めようとするのですが、人の心は因果関係を理屈で説明できるものじゃない、今の状況をありのまま受け入れなきゃ、という主張が入ったりもするのですが、個人的にはその辺はどうでもよく、むしろ途中から妙に説教臭くなるのが違和感がありました。

一つわかったのは、やっぱりアメリカ人は好きになれないなということ。

なんだかアメリカ映画のような登場人物群なので、ステレオタイプな感もあるのですが、傲慢で押し付けがましい夫や、うわべだけフレンドリーな近隣住民など、あーやだやだ、という印象だけが強く残りました。

その観点では興味深いものがありましたが、物語そのものは、誰の意見にも賛同できず、だれの立場にも感情移入できない感じで、個人的にはあまりピンと来ませんでした。説教臭くなければよかったのですが。

↓アマゾンではレビュー数が少ないせいかめちゃくちゃ高得点です。

寂寥郊野 (講談社文庫)

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