鍋の中/村田喜代子(1987年上半期受賞)


高校生の従兄弟4人(男2人女2人)が夏休みに子供たちだけで、80歳になる田舎の祖母の家に遊びに行く物語。ここ最近ピリッとしない芥川賞作品が続いていたのですが、この「鍋の中」は久々にぐっと来ました。

何と言っても年寄りの思い出話というのがいいです。

祖母は13人兄弟なのですが、どうしても1人だけ思い出せない。他の12人の兄弟のエピソードは一人一人覚えているけど、最後の一人が思い出せない。まるで20世紀少年の「カツマタ君は誰なんだ?」というくだりを彷彿させます。

ただ、単に懐かしい思い出というわけではなくて、祖母の13人の兄弟の話はかなりドロドロしていて、決してほんわかした話ではありません。でも、そんな暗い歴史がありつつも、現在の祖母がいて孫がいるというファミリーヒストリー的なしみじみ感は自分的にはすごくツボでした。

そして、田舎の祖母の家で過ごす夏休みという設定がノスタルジックがいいです。

田舎の古民家を舞台にした雰囲気は「サマーウォーズ」や「おおかみこどもの雨と雪」にも通じるものがあり、今の若い人が読んでも共感できるんじゃないかと思います。
というか、この作品も細田守監督が映画化すればハマりそうだなーとか思っていたら、1991年に黒澤明監督がすでに映画化しているみたいです。

↓アマゾンでも非常に高評価。やっぱりわかりやすくて面白い作品はみんな好きなんだなと少しほっとしましました。
鍋の中(Amazon)

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